永井 良三 先生
成人先天性心疾患対策委員会(循環器内科ネットワーク)委員長
自治医科大学学長
先天性心疾患をもつお子さんは毎年1万人誕生しています。病気が重い場合は手術が必要ですが、昔の手術成績は必ずしも良好ではありませんでした。ところが最近は、小児心臓外科学の進歩と関係者の努力によって、ほとんどの患者さんが成人に達することができるようになりました。しかしながら手術をしてもしなくても、心臓には少しずつ負担がかかってきます。成人後も心不全や不整脈などを起こしやすい状態が続きますので、専門医による経過観察を欠かせません。先天性心疾患は小児科の心臓専門の先生がよく理解されていますので、これまで循環器内科医が関与することは余りありませんでした。
現在、成人に達する方を含め先天性心疾患の方は70万人といわれており、まもなく100万人に到達すると予想されています。患者さんがこれだけ増えますと、小児科医だけではケアできません。このため内科と小児科の循環器医が連携して、しっかりケアをする体制が必要となってきました。しかし成人に達した先天性心疾患の患者さんの病気の状態を理解し、こころのケアを含めて診療することは決して容易ではありません。そこで2011年に成人先天性心疾患対策委員会が設立されました。すでに本委員会では症例報告や症例データベースの作成など、活発な活動を展開しております。これらの活動を通じて、成人先天性心疾患に関心をもつ循環器医と小児科医がお互いに学びあうとともに、必要なときは助けあう仕組みが作られ、多くの患者さんに高いレベルの医療を提供できるようになりますことを願っております。